「販売の問題は、販売自らの手で解決する」結成の原点を常に大切にされていた。大変革に直面している時代。困難を乗り越えてきた歴史に学ぶ。5 小川 今回、CNDの初代中央執行委員長である近藤宣昭さんの追悼企画ということで、歴代の委員長にお集まりいただきました。近藤さんがCNDに残してくださった功績や理念など、いろいろなお話をお聞きしていきたいと思っています。中野 私は、近藤さんとは長い付き合いです。労働組合時代に執行委員になったのも、近藤さんに声を掛けていただいたのがきっかけでした。小川 近藤さんは、どのような委員長だったのでしょうか。中野 人遣いが荒いというか(笑)、その人がCNDという組織に合うか合わないかを、とてもシビアに判断する人でしたね。鎌仲 確かに、人事や活動に対して、良くも悪くもご自身の意見をハッキリと言われる方でした。私も何度か近藤さんの受け答えを横で聞いた経験があるのですが、経営者と話しているときでも、言わなければならないことはビシッと本音で言う姿を見て、委員長というのはこういうものなのだと実感したことを覚えています。中野 CNDの結成当時は、営業ノルマ、休日問題、働き方など、いまでは考えられないような問題が現場に山積していました。経営にも、組合役員にも、時にキツイ言葉を投げかける近藤さんだったけれど、現場の声を吸い上げて行う活動に対しては一切何も言わなかった。「現場が困っているのであれば、少しくらい経営の抵抗があってもやらなきゃダメだ」と。委員長になると現場感覚が鈍ってくるものなんだけれど、最後まで現場を大切にされていました。鎌仲 営業ノルマにしても、休日問題にしても、どうしてもメーカーや経営の意向が関わってきます。例えば、販売店が休めば、売上げが減る。でも現場としてはしっかりと休みを取らせてあげたい。そこにどうしても感覚やスタンスのズレが生じてきます。そこで「販売の問題は、販売自らの手で解決する」という機運が高まり、CNDの結成へとつながった。現場の声を各組合が吸収して、CND全体の方針にできるような運動をしていかないと、業界全体の問題は解決できません。近藤さんは、その結成の原点のようなものを、常に大切にされていたのだと思います。小川 『加盟組合に一番近い上部団体であり続けること』というCNDの理念にもつながっていくお話ですね。中野 近藤さんをはじめ、当時の執行部が一番危惧していたのは、せっかく結成した上部団体が、組合員の声を吸収できない組※萌葱塾:近藤さん顧問時代、組合役員の人材育成を目的とした人材育成年間スクールを開設。人を育てることは若芽が育つことに通じることから「萌葱塾」とし、4年間塾頭を務められました。織になってしまうことでした。そうはならないよう、組合員との距離が生じないように、近藤さんは結成まもないCNDを牽引されていたように思います。たときです。私は一期生でした。当時、近藤さんはCNDの顧問という立場で塾の講師をされていたのですが、よく「歴史に学べ」と口にされていたことを覚えています。さまざまな歴史上の出来事を紐解きながら、リーダーとしての判断基準や決断に至るまでのプロセスについて教わったというふうに思っています。中野 歴史が大好きな人でしたから。小川 講義のなかで「組織というものは、勢いでつくれたとしても、できた後のモチベーションを維持するのが難しい。20年30年経つと、人の気持ちは変わっていくから」とおっしゃられたことがいまも印象に残っています。鎌仲 以前「CNDがこんなに続く組織だとは思っていなかった」と聞いたことがあります。近藤さんは、組織というものは、常に壊れやすいものであるということを、歴史のなかから学んでこられたのだと思います。中野 本当に組織とは脆いものです。最初は勢いでひとつになったとしても、そのうち販売は販売だ、サービスはサービスだ、部品は部品だと、それぞれが主義主張をし始めたら、あっという間に組織がバラバラになってしまう。そうさせないようにするのが組織のリーダーであり、近藤さんが人事にシビアだったのも、そこがわかっていたからだと思いますね。小川 いま、時代が大きく変わろうとしています。消費者の価値観の変化、環境・エネルギー問題、自動車の自動化・EV化、社会のデジタル化など、販売は販売だけの課題に向き合っていればいいという時代ではなくなってきています。中野さんがおっしゃるように、お互いが主張し始めたら、組織が分裂してしまう恐れがある。これからの時代は、より広い視野を持って、経営はもちろん、全トヨタ労連、各販売店、業種、職種など、それぞれの垣根を超えて課題を共有し、さらに協力し合いながら活動を進めていかなければと思っています。鎌仲 人手不足の問題をはじめ、さまざまな問題が今後さらに顕著になっていくでしょうが、私たちCNDという組織は、数々の自然災害、リーマン・ショックをはじめとした経済危機、そしてコロナ禍を乗り越えてきました。そういう歴史があるのですから、きっと乗り越えていけると確信しています。小川 その歴史の1ページ目を開いてくれたのが近藤さんです。今日の座談会のように、これまでの歴史を時おり振り返りながら、先人の思いをつなぎ、CNDの新しい歴史をつむいでいきたいと思います。本日はありがとうございました。小一川番 印近象藤にさ残んるかのらは受『け※萌もたえ葱講ぎじ塾義ゅく』のにな参か加でし、
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